大手銀行で38年働き、60歳で定年を迎えた松田さま。やっと自分の時間ができたと思ったころ、手元に残っていたのは、豊中市にある築50年の実家でした。
月に2回、鍵を回して窓を開け、たまった郵便物を抱えて帰る。誰も住んでいない家のために電車とバスを乗り継ぐ日々に、少しずつ疲れを感じていたといいます。
「古い家は壊してから売ったほうがいいの?それとも、そのままでも買ってもらえる?」
決心して不動産会社へ査定を頼むと、今度は別の壁にぶつかりました。同じ家を見てもらったはずなのに、提示された金額に思いがけない開きがあったのです。
数字を読む仕事を長く続けてきた松田さまでも、その理由までは分かりませんでした。
今回、クラウドハーツ・リアルエステートの「不動産売却コンサルティング」を受けられた松田さまに、決断までの道のりをうかがいました。
代表 西田:
本日はお時間をいただきありがとうございます。
どうぞよろしくお願いします。
松田さま:
よろしくお願いします。
実家をどうするか迷っている方に、私の失敗も含めてお伝えできたらうれしいです。
相続した豊中市のご実家を売却しようと思った経緯を教えていただけますか?

母を見送ったのが4年前で、豊中市の実家はそのまま私が相続しました。木造2階建てで築50年、土地は80㎡ほどの小さな家です。
私が生まれ育った家なので、すぐに手放す気持ちにはなれませんでした。月2回ほど通って換気や庭木の手入れをしながら、なんとなく2年が過ぎていきました。
転機になったのは、60歳での定年退職です。38年勤めた銀行を離れるとき再雇用の話もありましたが、これからの時間の使い方を考え直したくて選びませんでした。
仕事がなくなれば実家の管理は楽になると思っていたのに、実際は反対でした。私の体力は少しずつ落ちていくのに、家は年ごとに古くなっていくと気づいたときは、ひやりとしました。
夫とも何度も話し合い、住む予定のない家を持ち続ける理由はないという結論に落ち着きました。ただ、いくらで売れるのかも分からないまま動くのは怖くて、まずは地元の不動産会社3社へ査定を頼みました。
その結果にかえって戸惑ってしまい、銀行時代の同僚へ話したところ、クラウドハーツ・リアルエステートさんのコンサルティングを紹介してもらいました。
自宅から電話とメールでやりとりを始め、書類の整理から売却まで一つずつ進めた流れです。
ご実家の管理や売却について、相談前はどのようなことで悩んでいましたか?
正直にいうと、悩みだらけでした。まず重かったのが、往復90分の移動です。
電車とバスを乗り継いで実家に着くころには、もう帰りの時間が気になります。草がぐんぐん伸びる夏は、庭の手入れだけで半日が消えていきました。
お金の面は、書き出してみて驚きました。1年でかかっていた費用と、その中身は次のとおりです。
【実家の維持にかかっていた年間の費用】
- 固定資産税・都市計画税:約8万円(住んでいなくても毎年かかる)
- 火災保険と最低限の水道・電気代:約6万円(掃除や換気に水と電気が必要なため止められない)
- 庭木の剪定や雨漏りの補修:平均で約10万円(放っておくと近隣へ迷惑がかかる)
合計すると24万円ほどです。誰も住んでいない家に毎年これだけ払っていた事実を、私はずっと見ないふりしていました。
次に頭を抱えたのが、築50年の建物をどうするかという点でした。
古い家は壊してから売ったほうが買い手が付きやすいと聞く一方、解体には百万円単位のお金が必要だと聞き、どちらが得なのか見当もつきません。
そして、いちばん混乱したのが査定額です。3社の提示額は1,480万~1,960万円で、その差は480万円もありました。
同じ土地と建物を見てもらったのに、なぜここまで開くのでしょう。
高い金額を見せられると心は動きますが、その根拠を自分で確かめる力は持っていませんでした。
数字を扱う仕事を長く続けてきたのに、不動産はまるで別世界です。一人で決めるのは無理だと、このとき素直に思いました。
※年間の維持費用は、松田さまが実際に負担していた金額を整理したものです。建物の状態や地域、傷み具合によって費用は変わります。
複数の不動産会社へ査定を依頼したなかで、なぜコンサルティングを利用しようと思ったのですか?
きっかけは、銀行時代の同僚からの紹介です。自宅の買い替えで西田さんのコンサルティングを受けたそうで、「売る前に相談できる相手がいると全然違うよ」と背中を押してくれました。
査定を頼んだ3社のどこかへ、そのまま任せる道も考えました。
ただ、どの会社も自社と契約してもらう前提で話をするので、私にはどこまでが助言でどこからが営業なのか、見分けがつきませんでした。
紹介で聞いていたクラウドハーツ・リアルエステートさんは、売買の仲介をして手数料を受け取る立場ではありません。
「売らない」という選択肢も含めて提案すると知り、それなら数字を素直に受け止められると感じました。
決め手になったのは、すでに受けた査定を第三者の目で見てもらえる点です。私が欲しかったのは高い金額ではなく、480万円の差が生まれた理由でした。
コンサルティングを受けて、売却前に確認すべきことがどのように整理されましたか?
最初の作業は、手元の書類を全部そろえることでした。探してみると、足りないものがいくつも出てきました。
【はじめに確認した主な資料】
- 3社の査定書:どの取引事例を根拠にしたのかを読み比べ、金額の差の理由を探るため
- 登記事項証明書:母から私への相続登記が済んでいないと売却の手続きに進めないため
- 固定資産税の納税通知書:土地と建物それぞれの評価額を把握するため
- 母が保管していた測量図や建物の図面:土地の広さや境界の記録が残っているか確かめるため
査定書は、それまで金額の欄しか見ていませんでした。
3社の根拠を横に並べると、建物に値を付けた会社と土地だけで計算した会社があると分かり、思わず「あっ」と声が出ました。そこから、売り出す前に決めておくべきことを一つずつ整理してもらいました。
中でも忘れられないのが、境界の話です。
隣家との境目に目印が見つからず、測量が必要かどうかを先に確かめるよう助言されました。
売主は引き渡しの前に境界の位置を買主へ示すよう求められる場合が多く、契約後に慌てて測量すると引き渡しが遅れると聞いて、背筋が伸びました。
家財の処分も、私が甘く見ていた部分です。
仏壇や母の着物、古い家具が残ったままだったので、片付けの費用は会社ごとに開きが出やすいと教わり、3社から見積もりを取りました。
仲介契約についても、初めて知ることばかりでした。
専任媒介と一般媒介では売り出し方や報告の頻度が違い、契約の種類を自分で選べると知って驚きました。
税金の面では、税理士へ確認すべき項目を書き出してもらいました。自分では思いつかない質問が並んでいて、これが一番助かりました。
【税理士へ確認した項目】
- 母が家を取得したときの費用が分かる資料:残っていないと税金の計算で不利になる場合があるため
- 相続した家の売却で使える特別控除と、その期限:使えるかどうかで手元に残る金額が変わるため
- 譲渡所得の申告の時期と手順:売った翌年に自分で申告する必要があるため
確認の結果、相続から3年を超えていたため、期限のある控除は使えないと分かりました。がっかりしましたが、知らないまま進めて後から気づくより、ずっとよかったと受け止めています。
もう一つ、答えに詰まった質問があります。
「売ったお金を、これからどう使う予定ですか」と聞かれたときです。
私は金額を上げることばかり考えていて、その先を思い描いていませんでした。老後の生活費に回すと言葉にしてみると、いつまでに売りたいのかまで自然に固まっていきました。
※税制の要件や期限は一人ひとりの事情で異なるため、原則として、税理士等の専門家への確認が必要です。
最終的にどのような売却方法を選び、何を基準に判断しましたか?
比べたのは、大きく2つです。建物を残したまま売るか更地にして売るか、そしてどの会社へ仲介を頼むかという点でした。
解体費用は2社から見積もりを取り、どちらも120万円前後でした。
更地にすれば高く売れる見込みはあるものの、上乗せできる金額は買主の計画によって変わるため、費用を回収できるとは限らないと説明を受けました。
木造の小さな家なので、購入した方が自分の設計に合わせて解体する場合も多いそうです。それを聞いて、建物は残したまま売り出すと決めました。
会社選びでは、1,960万円を出した1社と、1,700万円台を出した1社で最後まで揺れました。
高い数字は魅力的でしたが、根拠を尋ねても「頑張ります」という言葉しか返ってこない点が引っかかりました。もう一方は、周辺の成約事例と、反応が鈍いときに価格を見直す時期の目安まで示してくれました。
迷った末、根拠を語れる会社と専任媒介契約を結びました。
本音では、西田さんに背中を押してほしい気持ちもありました。それでも自分で選んだからこそ、売り出し後に価格を見直す場面でも誰かのせいにせず、前へ進めたのだと思います。
※売り方や会社の選び方は、土地の広さや建物の状態、地域の需要によって適した形が変わります。
1,820万円での売却を終え、その後の暮らしや資金管理はどのように変わりましたか?
売り出しから成約までは、およそ4カ月でした。
1,880万円で募集を始め、内覧に来られた方との交渉を経て1,820万円で契約しました。引き渡しまでにかかった費用も、先に見通しを立てていたので慌てずに済みました。
【売却にかかった主な費用】
- 仲介手数料:約66万円(1,820万円×3%+6万円に消費税を加えた金額)
- 境界の確認にかかった測量費:約45万円(目印がなく、隣家立ち会いのもとで確定したため)
- 家財の処分費:約28万円(家具と仏壇を含め、軽トラック数台分の量があったため)
暮らしの変化で一番大きいのは、カレンダーに「実家」と書く日がなくなったことです。台風のニュースを見ても、屋根や雨漏りを心配してそわそわしなくなりました。
毎年出ていた24万円が手元に残るのも、家計としてはありがたい話です。そのぶん、夫と近場の温泉へ出かける回数が増えました。
売却で残った資金は、個人向け国債と定期預金に分けています。銀行に長くいたので値動きのある商品も知っていますが、これからは増やすより減らさない時期だと考えました。
【資金を2つに分けた理由】
- 個人向け国債(変動タイプ):老後の生活費の土台なので、元本を守りながら金利の変化にも合わせたいため
- 定期預金:医療費や家の修繕など、急に必要になったときすぐ動かせるお金を残したいため
年金と合わせて、80代までのおおまかな収支を紙に書いてみました。数字が見えると不安が薄れると実感しています。
※売却に係った費用は、松田さまの事例での概算です。土地の状況や依頼先、家財の量によって金額は変わります。
※資金の分け方は松田さまの考えによるものです。運用の判断は、年齢や家族の状況、使う時期に応じて金融機関等へ相談してください。
実際にコンサルティングを受けてみて、率直にどのように感じましたか?
一番の収穫は、査定額を比べる前に登記や境界、家財の状態を確かめるという手順が身についたことです。
先に足元を整えてから金額を見ると、同じ数字でも意味がまるで違って見えました。
ただ、良いことばかりではありません。相談前は、費用を払っても売却そのものを代わりに進めてもらえるわけではないのだから、もったいないのではと疑っていました。
紹介で受けた手前、途中で断りにくいのではという心配もありました。実際は進め方を都度確認してもらえたので、その不安は早めに消えました。
想定と違ったのは、作業の多さです。書類を探し、会社へ電話し、見積もりを比べる作業は自分の手で進めるため、慣れるまでは正直ばたばたしました。
特に測量や家財処分の手配は、思っていたより日数がかかります。時間に余裕のない方だと、しんどく感じる場面もあるかもしれません。
相続した築古の実家を手放すか迷っている方へ、どのようなことを伝えたいですか?
まず伝えたいのは、迷っている間も費用と手間は静かに増えていくということです。私は2年ほど様子を見ましたが、その間に払った維持費と通った時間は戻ってきません。
売ると決めていなくても、先に調べておくと選べる道が広がる項目があります。
【売却を決める前に確かめておきたいこと】
- 税金の控除と期限:相続した家の売却には期限のある控除があり、私は3年を超えて使えなかったため
- 査定額の根拠:高い数字が実力とは限らず、説明できるかどうかが会社選びの手がかりになるため
- 解体するかどうかの判断材料:土地の広さや建物の造り、その地域で家を探している方の目的によって答えが変わるため
それから、家族と気持ちを話しておくことも大切です。私は思い出のある家を売る後ろめたさをずっと抱えていましたが、夫や妹に打ち明けたら、ふっと軽くなりました。
一人で抱えていると、お金の計算と手放す寂しさが混ざって動けなくなります。
費用や手続きの話は中立の立場で整理してもらい、気持ちの部分は家族と分け合う形にすると、判断がぐっと進みやすくなります。
今の私は、絵手紙の教室で季節の花を描く時間を楽しんでいます。実家の心配で埋まっていた頭に、こんな余白ができるとは思いませんでした。
代表 西田:
本日はありがとうございました。
書類を一つずつそろえながら、ご自身で選び切った過程が、松田さまの言葉によく表れていました。
松田さま:
私の細かい質問に何度も付き合ってもらえて、心強かったです。
あのまま一人で進めていたらと考えると、少し怖くなります。
楽しい時間でした。ありがとうございました。
【今回お話を聞いた方】

[名前]松田さま(仮名)
[年齢]62歳[居住地]大阪府
[家族構成]夫(65歳)と二人暮らし
大手銀行を定年退職後、母から相続した豊中市の築50年の実家を管理していた。月2回の通風や庭木の手入れに加え、固定資産税や光熱費、修繕費など年間約24万円の負担が続き、今後も維持するのは難しいと判断。地元の不動産会社3社に査定を依頼したものの、提示額に480万円の差があり、適正価格や売却方法を決められず相談した。境界確認や家財処分、税務上の確認事項を整理したうえで、最終的に1,820万円で売却。現在は手取り資金を老後の備えとして運用しながら、絵手紙を新たな趣味として楽しんでいる。
※写真はプライバシー保護のためイメージです。
【取材・編集について】
- 取材対象:不動産売却コンサルティング利用者
- 取材方法:オンラインインタビュー
- 確認資料:相談時の記録、不動産会社3社の査定書、維持費と売却諸費用の記録
- 匿名加工:プライバシー保護のため氏名など一部の情報を変更
- 内容確認:公開前に取材対象者および代表の西田が確認
